【こんな症例も治りますシリーズ 857】『 セカンドオピニオン診療 : ワンちゃんの眼が見えない・元気がない・歩きたがらない 』も適切な診断と治療でコントロールします

↑ 上のイラストは、犬の甲状腺機能低下症の症状を説明しています。

 

 

『 「もう仕方ない」と思われていたワンちゃん ― 目の病気だけではありませんでした 』

 

 

犬 柴犬 11歳 メス(避妊手術済み)

 

 

今回は『 急に目が見えなくなった 』とのことで、セカンドオピニオンをご希望されて来院されたワンちゃんです。

 

 

 

【 急に目が見えなくなってしまった 】、

【 散歩でもあまり歩かなくなり、元気もない 】、

【 目の病気だから、もうどうしようもないのでしょうか… 】との事でご来院されました。

 

 

 

◆◆ これまでの経過

 

 

■ 『 他院で突発性後天性網膜変性症(SARDS:サーズ)と診断 』されていました。

 

■ 当院でも特殊検査機器を用いた眼科精密検査を行い、同じく突発性後天性網膜変性症と診断しました。

 

■ この病気は、数日から数週間という短い期間で失明してしまうことが多く、現在のところ視力を回復させる確立された治療法はありません。

 

 

■ ただ、診察を進める中で、目以外にも気になる点がいくつかありました。

 

 

 

◆◆ 検査所見

 

 

■■ 身体検査

 

・ やや肥満傾向

・ 徐脈(脈がゆっくり) = 心臓の拍動がゆっくりになっている状態

・ 飼い主様のお話では、失明する約半年前から元気がなくなっていた

 

※ これらは、目の病気だけでは説明しきれない可能性があると考えました。

 

 

 

■■ 鑑別診断(この時点で考えるべき疾患)

 

 

高齢のワンちゃんで、

 

・ 元気消失

・ 肥満傾向

・ 徐脈

 

といった所見がみられる場合には、甲状腺機能低下症も重要な鑑別疾患の一つです。

 

 

 

■■ 血液検査(甲状腺ホルモン検査)

 

 

・ 甲状腺ホルモンの低下を確認

 

※ ただし、甲状腺ホルモンは高齢や他の病気の影響でも低下することがあります。

※ そのため追加の検査も行い、総合的に評価した結果、甲状腺機能低下症と診断しました。

 

 

 

◆◆ 診断の落とし穴

 

■ 『 目の病気だから仕方がない 』と考えてしまうと、

 

・ 元気がない

・ 散歩を嫌がる

 

といった症状の原因を、そのままにしてしまう可能性があります。

 

 

 

■ その結果、

 

・ 治療によって良くなる病気を見逃す

・ 生活の質(QOL)が下がったままになる

 

 

ということが起こります。

 

 

 

■ そのため、『 目の病気だから、すべて仕方がない 』と決めつけないことが重要です。

 

 

 

◆◆ 今回の判断

 

 

■ 今回の症例では、

 

・ 高齢のワンちゃん

・ 肥満傾向

・ 徐脈

・ 失明よりも前からの元気消失

・ 甲状腺ホルモンの低下

 

が確認されたため、元気消失の原因として甲状腺機能低下症の関与が強いと判断しました。

 

 

 

◆◆ 治療

 

 

・ 甲状腺ホルモンを補充する内服治療を開始

 

 

 

■■ 経過

 

 

■ 治療開始後、

 

・ 元気が徐々に改善

・ 散歩でもしっかり歩けるようになった

・ 活動性が明らかに向上

 

しました。

 

 

 

■ 残念ながら視力を回復させることはできませんでしたが、生活の質(QOL)は大きく改善し、飼い主様にも大変喜んでいただけました。

 

 

■■ この症例から分かること

 

■ 今回のポイントは、

 

『 一つの病気で、すべての症状を説明しようとしない 』

 

ということです。

 

■ 確かに失明は突発性後天性網膜変性症によるものでした。

 

■ しかし、『 元気がない 』『 散歩を嫌がる 』という症状には、別の病気が隠れていました。

 

■ もし『 目の病気だから仕方ない 』と考えて追加の検査を行わなければ、甲状腺機能低下症は見逃されていたかもしれません。

 

 

■ 臨床で重要な考え方

 

・ 症状だけで決めつけない

・ 身体検査を丁寧に行う

・ 血液検査やホルモン検査で原因を確認する

・ 治療前に鑑別診断を整理する

 

 

ことが重要です。

 

 

 

◆◆ まとめ

 

 

・ 突発性後天性網膜変性症(SARDS)は急速に失明する病気

・ 現在のところ視力を回復させる治療法は確立されていない

・ しかし、元気消失などの症状がすべて目の病気によるとは限らない

・ 身体検査や追加検査から別の病気が見つかることもある

・ 今回は甲状腺機能低下症を治療することで、生活の質を改善することができた

 

 

■ 一つの病気が見つかると、その病気だけに目が向いてしまうことがあります。

 

■ しかし、動物たちは複数の病気を同時に抱えていることも少なくありません。

 

■ 『 年齢のせい 』『 この病気だから仕方ない 』と決めつけず、気になる症状がある場合はお気軽にご相談ください。

 

 

 

獣医師 土屋優希哉

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